








【画家紹介】
アルヒープ・クインジ(1842–1910)は風景画のジャンルにおいて傑出した才能を持つ画家である。
クインジはウクライナのマリウポリに生まれる。
幼い頃より両親に先立たれ、父方の叔父に引き取られる。
絵を描くのは大好きであったが、家族は貧しく、厳しい幼年時代を送っていた。
絵を本格的に学ぶなら巨匠アイヴァゾフスキーに師事すべきだろうと、意を決して巨匠の拠点があるクリミアのフェオドシアへと赴くが、アイヴァゾフスキーに絵の才能を認めてもらえず、絵の具作りや壁のペンキ塗りなどの雑務をやらされるだけであった。
結局、クインジに絵を教えたのはアイヴァゾフスキーの親戚であり門下生でもあるアドリフ・フェースレルという若者だった。
直接巨匠に師事することが叶わなかったクインジはアイヴァゾフスキーの作品を模写するなどして絵の基礎を学び、フェオドシヤでの日々を過ごした。
1865年にはサンクトペテルブルクの美術アカデミーを志すが、2回試験に失敗。3回目にしてようやく名門への入学が叶った。
このように、19世紀ロシアにおける巨匠の一人も苦節の時代を長年味わっていた。
アカデミー時代はクインジにとって転機であった。
イヴァン・クラムスコイ、イリヤ・レーピンといった移動派の画家たちと出会い、単なるアカデミズムから脱しロシアの人々、風俗、自然を克明に描き出す移動派の精神に共感を覚えることになる。
1875年には移動展覧協会に属し、その後数年間協会の展覧会に自身の作品を展示した。
移動派を脱した後の1880年、クインジの作品で最も有名な作品『ドニエプル川の月夜』が描かれる。
この『ドニエプル川の月夜』はなんとも不思議な作品である。
画面にあるのは川面と暗闇、そしてそれらを照らす月のみ。しかし実際にこの作品の前に立ってみると驚くべきことに月から眩いばかりの光がこぼれ落ちているように感じるのである。
単なる絵の具がここまで光を発することが出来るのか?電飾でも埋め込んでいるのでは?と疑問に思うのもおかしくないほどだ。
クインジの光に対する研究の手法は同じく光の表現に着目したフランス印象派とはベクトルが異なる。
自然そのものを徹底して見つめ続け、自然の最も美しい状態を並外れた精確さでキャンバスに描いている。
リアリズムにおいて「光を描く」ことに成功した画家としてはクインジがおそらく唯一の存在だろう。
1890年代に入るとクインジはアカデミーで教鞭をとるようになる。
ニコライ・レーリヒをはじめとして、クインジに師事した画家は20世紀において活躍した。
クインジは後世に大きな影響を残し、今現在でも広く愛されている。
ハードカバー、大型本
176ページ、250×350mm
言語:ロシア語
刊行年:2018年
出版:ベールイ・ゴーラト
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