





【画家紹介】
イサーク・レヴィタン(1860〜1900)
現在のリトアニアに位置するキバルタイという小さな町のユダヤ人一族の元に生まれる。モスクワの美術学校ではペローフ、サヴラーソフ、ポレーノフに師事し、絵画を学んだ。
『かもめ』『桜の園』などの戯曲で知られるアントン・チェーホフと親交があり、レヴィタンと彼とは家族ぐるみの付き合いであった。レヴィタンは晩年をチェーホフ家で過ごしている。
レヴィタンの作品は言語化するのがなかなか難しい。風景画と言われれば確かにそうである。だがシーシキンやサヴラーソフらが描く写実的でロシアの自然の美しさを雄弁に語るような作品ともまた性質が異なるように思われる。レヴィタンが描くのは自然の永遠性だ。自然は長大な時間を生きながら、形を変えることがない。不変で永遠なる自然の前には、人はあまりにも短命で無力で儚い存在である。20代のレヴィタンはクリミアの崖岸を登りながら、永遠の美しさを誇る自然の姿に魅了されると共に人間の無力さを思い知り、涙ぐんだという。
故にレヴィタンの風景画はただ写実的に自然の風景を描いたものではない。彼の作品を論ずる際には「叙情」というワードが頻出するが、彼の作品における叙情性とは、静謐で美しい自然を目にしたときに感ずるハッとするような心の揺れ動きである。黄金に輝く秋の森林、爽やかな風がそよぐ夏の草原、陽光に照らされて少しずつ溶けていく春の雪原。レヴィタンにとってそんなロシアの大地で生きる者には当たり前の風景が何よりも美しく見えたのであろう。そして遙か遠い地に生きる私たちも、レヴィタンの絵を観る時、何か心動くものがあるに違いない。
レヴィタンが心奪われた自然の美しさは画家のカンバスの中で永遠に生き続けている。工業が発達し、永遠なる自然が失われつつある現代において、その美しさを未来永劫留め続けられるものは絵画だけなのかもしれない。そんなことを思わせるほど、レヴィタンの絵画には不思議な魅力が詰まっている。
本書ではロシアの四季をテーマにレヴィタンの作品を収録。
画集の図版で見ても、鮮やかで表情豊かな自然な美しさを感ずることができます。オールカラーで図版を中心とした書籍ですので、ロシア語を知らない方にもオススメできます。
ソフトカバー
72ページ、215x300mm
言語:ロシア語
刊行年:2018年
出版:ベールイ・ゴーラト社
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