






2015年にロシア美術館で開催されたワレンチン・セローフの展覧会の図録。
本展のテーマは「肖像画家『ではない』セローフ」
セローフといえば、レーピンの後継として「銀の時代」における最も大きな評価を得ている肖像画家の一人である…というのが一般的な見解だ。もちろん間違ってはいないのだが、セローフに対するこうした評価は同時代人、そして後世の人々による一方的なものに過ぎず、セローフは「肖像画家」という枠にのみ収まる人物ではない。
この特別展では一般に肖像画家と呼ばれることの多いセローフの静物画や風景画など「肖像画でない」作品を中心に250点以上を展示。
本カタログの表紙を飾る『エウロペの略奪』(1911年)は晩年まで新しい表現を求め続けたセローフの集大成となる名画である。リアリズムの様式で描かれた青年時代の傑作『桃と少女』(1887年)とはまるで対象的で、背景や人物のフォルムを簡略化し大胆なタッチで荒々しく描いている。同じ主題であるティツィアーノのダイナミズム溢れる作品と比べれば随分と静的でおとなしい印象を受ける。晩年のセローフはこのような象徴主義的な作品にも積極的に挑戦した。
セローフは自身が「偉大な肖像画家」として扱われることに心を痛めていた。彼自身はブルジョワ世界に身を置き、貴族の肖像画を数多く描いていたが、それは家族を養うためでもあった。
セローフは語っている。
「必要なのは貴族ではなく農夫を知ることだ。我々はいつも貴族のためばかりに描き、技巧や華やかさだけを追っている」
「私は肖像画家ではない。ただの一人の画家なのだ」
と。
セローフはきっと華やかな世界よりも素朴な自然の世界に心惹かれていたのだろう。
画家の生誕150周年を記念して開催されたこの企画展はセローフの知られざる一面を表に引き出す、挑戦的な展示となった。
【画家紹介】
ワレンチン・セローフ(1865-1911)
サンクトペテルブルクに生まれる。
パリでレーピンから素描などを学んだ後、ロシアに戻りペテルブルク美術アカデミーにてチスチャコフに師事した。
『桃と少女』(1887年)や『陽光を浴びる少女』(1888年)はセローフの初期の傑作として名高い。
ハードカバー、大型本
216ページ、310×300mm(横×縦)
言語:英語
刊行年:2015年
出版:パレス・エディションズ、ロシア美術館
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